上々日常 日々の色々を衣絵がテキトーにつづります。関係者のみなさま、笑ってユルシテ。
その1 家事のゆくえ
 

その21 育てるモード

 「たまごっち」というおもちゃがある。
 小さな卵形に液晶画面が付いていて、その中でキャラクターを育てるというモノである。ご飯やおやつもあげなければならないし、お世話が行き届かないと病気になったり死んでしまったりするというやっかいな代物でもある。
 はじめて見たのは、忘れもしない長男の1ヶ月検診を受けに産院に行ったとき。入院時に同室だった人が持って来ていた。生後1ヶ月と言えば、夜も3時間おきに授乳をしなければならない一番大変なとき。驚いた私は思わず
「そんなモノまで育ててるの〜?」と、口走ってしまった。思えばその人は第二子目の出産で、初めての子供で、いっぱいいっぱいだった私とは、比べようもないくらいの余裕があったのだろう。

 あれからおよそ9年。たまごっちは第2のブームを迎えているらしい。
 流行っているらしいということは、ずいぶん前から知っていたのだが、最近にになってやっと長男の元にもやってきた。人気があって品薄で買えなかったとかいうわけではなく、流行に疎い、というか慎重な長男がやっと欲しくなったということで、彼が興味を持つと私の中では「世の中に行き渡ったな」という実感が湧くのだ。思えばゲームボーイですら、周りのお友達がみんな持っているのに、「欲しいな」と言いだしたのはDS発売の少し前。たぶん、SP最後の世代であろう。

 さて、たまごっち。
 9年たって、ずいぶんと進化したらしい。「らしい」というのは前のをよく知らないからで、たぶん知っている人にとっては、格段の進化と映るのではないだろうか。
 なにしろ、通信が出来るのだ。で、お友達の育てたキャラクターと、結婚できちゃったり、お友達になれちゃったりするのだ。ちょっとしたコミュニケーションツール。これは、オモシロイだろうなと思う。
 もちろん、ご飯やおやつ、ウンチの世話、ご機嫌が悪ければ遊んであげなくちゃいけないし、病気になったらお薬もあげなくちゃいけない。そして、その頻度や手のかけ方によって、違ったキャラクターに育つのである。
 お友達と通信しなくても、成熟度によって「仲人おばさん」みたいなキャラクターがやって来て、お見合いをすると、子供が生まれる。しばらく2つのキャラクターが共存した後、「世代交代」がおこるのである。オモシロイ。たしかに。
 しかーし!もちろん学校には持っていけないため、日中の世話はもっぱら親である。いずこの家庭も同様で、時たま友達とランチなどしていると、どこからともなく「ピロロ〜ン」。携帯の着メロと違って、みんな同じ音だから「今のは誰の音?」と、みんなでバッグを開くことになる。在宅中も、居間のテレビの上の定位置から「ピロロ〜ン」と音がすると、ウンチが出ているから流してやらなくちゃ、とかお腹がすいてないかしら、とか気になってしかたがない。
 子供のおもちゃなのだから、放っておけばいいようなものの、この「お腹がすいた」が、私にとってはくせ者なのだ。
 家の中に、お腹をすかせた子供(?)がいるのを放っておくことが、どうも出来ないのだ。ウンチがたまった状態も、おむつかぶれのひどかった次男を思いだしてしまって、どうもいけない。病気の状態というのが、どくろマークで示されるのも、放っておいたら死んじゃうかもと、落ち着かない気持ちにさせられる。ついつい、ご機嫌ゲージを確認して、せっせとお世話をしてしまうことになる。
 たまたま覗いてみたときに、病気になって死んでしまった場面に出くわしてしまった夫も、後味の悪さからときどき遊んでやったりしている。
 当の長男はといえば、朝学校に行く前にはまだキャラクターが眠っているため(起床はキャラクターによるみたいだけど、だいたい9時くらい)なにもせず、帰ってきてもランドセルを投げ出すやいなや公園に走っていってしまって、夕方5時以降にならないとさわりもしない。
 いったい誰のおもちゃなんだか。しょうがないなあとと言いつつも、今日もいそいそと小さな液晶をのぞき込んでしまう私。もう、生活が「育てる」モードになっちゃってるんだよなあ。もうひとり生んだと思って、と言い訳しつつ、ピコピコする毎日。「お腹すいてなあい?」なんて言葉かけまでしちゃったりして・・・。おかげさまで、ただいま第3世代。くりぽっちからいちごっちに進化したところである。

 ちなみに、サザエさんに出てくる波平さんみたいな頭をした「訪問販売」もやってくる。おやつのシュークリームだのちくわだのというアイテムを、ゲームでゲットした「ごっちポイント」で買うことが出来るのだ。
 初めて見たとき長男に、「なんか押し売りみたいなのが来てたよ」と言ったら、不思議そうな顔で「お母さん、押し売りって何??訪問販売じゃないの?」と言われてしまった。
 ・・・押し売り。もう死語だわね・・・。

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