その20 いろいろないろを
子供が生まれてから一番気を遣っているのが、食品添加物。
防腐剤とか、安定剤とか、発色剤とか、「剤」が付くものって、いかにも食べ物じゃない気がするし、着色料の赤色○号黄色○号というのも、なんだかあやしい。巷の情報によれば、赤色○号とかいうのはタール色素というものだそうで、石油化合物っぽさがただよう。
だいたい食品には本来の色があるわけで、改めてつけなくても良いじゃん、などと思ったりするのだけど、そうも行かないのが現状なのだろう。自分でお菓子などを作るとわかるのだけど、バナナをつぶしたものはすぐに酸化してキタナイ茶色になっちゃうし、イチゴだって、赤いのは外側だけで、中は白っぽい。イチゴだけを使ったのでは、赤い菓子にはなかなかならないのだ。
ハムだってきれいなピンク色をしているのは、発色剤のおかげであって、生協などで買うハムは、人間で言えば「顔色悪いけど、大丈夫?」と言いたくなるような色をしている。
やっぱり、バナナアイスは黄色の方が美味しそうだし、イチゴゼリーはきれいな赤い色をしててほしいし、ハムサンドは、真っ白いパンの間からピンク色が見えるのが望ましいというのが、刷り込まれてしまった、市場の常識となっているような気がする。だからこそ、食品メーカーは「美味しそうな色」をつけることに余念がないのだろう。
・・・と、偉そうにぶっているけれど、私も小さい頃にはきれいな色のお菓子が大好きであった。
下町育ちである故に、駄菓子屋は遊び場の一部だった。店先には、ゴムボールや簡単な飛行機などの玩具と一緒に、色とりどりの菓子が所狭しと並んでいて、限りあるお小遣いをいかに有効に使うかに頭を悩ませる日々だった。
まあるいガラスの容器の中にぎっしり詰まったドングリアメは、赤、黄色、緑、黄緑、オレンジ、水色、茶色・・・いったい何色あっただろう。ひも付きでくじ引きになっていたイチゴアメ、ミルクせんべいに付ける梅ジャム、真っ赤な麩がし、ソーダガム、3色アイス、のらくろガム、シロップ漬けのスモモ、アンズアメ・・・。
一応、食卓に赤いウィンナーは載らない家だったので、「買い食いはダメよ」と言われてはいた。だから、秘密で買う、食べる。これがまた、より美味しく感じさせるエッセッンスであったのかもしれない。
「ただいま〜」
「おかえり。また、駄菓子屋さんに行ったの?」
「行ってないよ!」
「口開けてごらん」
「あ〜〜ん」
「やっぱり行ったね」
口の中は、食べた駄菓子の着色料で真っ赤っか。一目瞭然であった。
ところで、駄菓子大好きなこのころでも、けして口にしないモノがあった。
それは、かき氷の「ブルーハワイ」。
かき氷のシロップは、真っ赤なイチゴ、実物よりも濃い緑色のメロン、目にも鮮やかなレモンと、着色料丸出しのモノばかりであったけれども、どれも、わからないではないという色であったのに対し、ブルーハワイのさわやかなブルーは食品にはあるまじき色に映った。だいたい、何味?とつっこみたくなるようなネーミングではないか。小学生くらいの時に、お祭りの縁日で初めて目にしてから、一度も口にしていない。だから何味なのか、未だにわからない。ハワイの味、香りがするのかしらん。
スーパーなどで買い物をするとき、賞味期限と一緒に、必ず原材料名をチェックする。お財布の中身と相談しながら、なるべく「剤」の付くものが入っていない、タール色素を使っていない食材を選ぶ。たいてい無添加な食品ほど高いので、困る。
ある日家で、通販で買った口紅を箱から出しているときふと見ると、原材料表示には赤色○号、黄色○号のオンパレード!!食品には気を配っていたけれど、自分だけが使う化粧品は盲点であった。
ン?ちょっと待って。母や祖母の例をひくまでもなく、女の人はほとんどの人が昔から口紅を使ってきたはず。口紅ははげてしまうのが宿命で、食後には必ずと言っていいほど塗り直しが必要で、と言うことは「食べて」しまっていたわけで・・・。今でこそ、自然派化粧品とか、落ちにくい口紅などがあるけれど、昔はそんなモノはなかったわけで・・・。
つまり、男性よりもダンゼン多く、合成着色料を摂取していた女性の方が平均寿命が長いのは、何故?という疑問にぶつかったのだ。
合成着色料って、体に悪いんじゃなかったの?発ガン性があるって、本で読んだこともあるけど、ホントはどうなの?口紅と平均寿命の因果関係について、誰か研究して発表してくれないかしら。毎朝、口紅を塗りながら、これは人体実験かなとちらっと考えるのであった。
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