上々日常 日々の色々を衣絵がテキトーにつづります。関係者のみなさま、笑ってユルシテ。
その1 家事のゆくえ
 

その18 おうちことば

 東京の下町で生まれたわたしと、新潟は上越高田で生まれた夫。全く異なった地域で生まれ育った私たち。
結婚当初、小さな「!」は日常茶飯事であったが、生活の上で不都合が生じるような差異はほとんど無かった。食べ物も、服の好みもそう大きなズレはなく、お互いに初々しく(?)もあったので、寄り添おうとする気持ちも強かったのだろうと思う。(あ、過去形で書いちゃったけど、一応現在進行形って事で)
 が、時々わからない単語が出てくる。むこうも私の言葉に目が?の形になることがある。

 たとえば、子供に離乳食をあげているとき。もぐもぐ期の食事は、舌ですりつぶせる程度の柔らかさ。子供もまだまだ食べるのがへたくそで、口のまわりにいっぱいついてしまう。
「見て見て、口のまわりがこんなにくわんくわんになっちゃった!」と私が言うのに、夫は
「???その、くわんくわんて何?」
「え〜?くわんくわんは、くわんくわんだよ。知らない?」
「・・・初めて聞いた」

 たとえば、新潟に帰省していて、子供が蚊に刺されたところを、強く掻いているとき。
「そんなに、がっちょに掻きなんな」と義母が言う。
「???お母さん、がっちょってなあに?」
「強く、とか、激しくとか・・・」
「初めて聞いた!おもしろ〜い」
 聞いていると、それ以外にも、もっと広く使われている言葉のようだった。
「ずいぶん、がっちょなカボチャだねえ」とか、
「皮ががっちょで剥きにくい」とか。
 この言葉、かわいくて重宝なので、もうすでに私の日常語と化している。
 もうひとつ、夫の実家で習った(?)言葉で好きなのが「みぞっこ」。
 たとえば、買ってきた魚やエビの中に一匹だけ小さいのが混ざっていたとすると
「まあ、この子はみぞっこだねえ」と使う。
 ね?なんだかかわいらしいでしょ?それに、やわらかい感じもして好きなのだ。がっちょほど、応用は利かないけれども。

 先日、次男のサークルで知り合ったお母さんの実家が、夫の実家とさほど離れていないことが判明。
「がっちょって、使うでしょ?」と聞くと
「???知りません〜何ですか?」・・・。 
 あれ?あのあたりの言葉じゃなかったのかな?でも、お母さんや夫の妹君も普通に使っているし・・・。
 きっと、これは「おうちことば」だ!お母さん(お父さん)が開発して、子供はそれを普通に使って成長し、嫁に伝授した、と。
 そういう言葉って結構ある気がする。
 信号の点滅、なんて言いますか?私は「ちかちか」。学生時代のバイト先のおばさんは「ちゃかぽこ」といっていた。ほかにも「ぱかぱか」とか「ぴこぴこ」とか色々聞く。
 友達の所の女の子は、手を洗うと「お母さん、ぱっぱ、ちょうだい」という。ハンカチとかタオルのことらしい。よだれかけを「あぷちゃん」と呼ぶ人もいたっけ。

 考えるに、子供が小さい頃、赤ちゃん言葉の延長で遣っていたものが、いつの間にか定着してしまうっていう説が濃厚なんじゃないかな?そういえばこの間、ひとつしかないものを兄弟でわけさせるときに、
「これ、はんぶんつね」と言ったら、長男に
「お母さん、はんぶんこでしょ?」と言い直されてしまった。私の中ではごく普通の言葉だったのだけど、よく考えれば長男の方が正しい・・・。母が使っている言葉でも、継承されないものもあるという実例・・・(ちょっとサミシイ)。

 ちなみに「おうちことば」というのは、私が考えた言葉。
 方言ではない、その家独特の言葉って、なんだかあったかくて、かわいらしい。調べたら、色々おもしろい言葉に出会えそうな気がする。老後は、「おうちことば研究家」って事にしようかな。あ、 Kamioka Kinue でお願いします。

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